春は毎年やってくる。
そしてしばらくして終わりを告げ、
1年も経たないうちにまたやってくる。
そう、季節の春は毎年やってくる。
しかし人生の春はそうはいかない。
2003年、春。
春に見放された漢水口耕介、は未だ健在のようだ。
2001年4月。学生を終え、就職し、人生の転機を迎えた彼がいた。
しかし彼には障害があった。
小樽での勤務。現場仕事。勤務時間のずれ。
そして彼はキャバクラに走った。
「ナイトエンジェル」と「USA」
2002年4月。彼は転勤になった。
大阪。事務職。一般的な勤務時間。
障害は取り除かれた。
しかし一度停滞していた時間はなかなか動き出そうとしない。
住む場所が南に移ろうと、彼の冬は長く、厳しい。
春はまだ、来そうにはない。
彼が卒業してからも、彼と私は1年に何度かは顔を合わせている。
それは札幌であったり弘前であったりするわけだが、
我々にとっては、
『会う=酒を飲む』
という式が成り立つ。
酒を飲んで、そしていろいろ話すわけである。
話す内容は近況が殆どだったりするわけだが、
まあ今回は内容はちょっと置いといて、
酒を飲む際に彼が、学生時代と比べて、
大きく変わったことについて述べるとしよう。
それは、彼が非常にアルコールに弱くなったということである。
はっきり言って、『なんじゃそりゃあ!』と怒鳴りつけたくなるほど弱い。
しかも、彼が就職してから3年とちょっと経つが、
その間、どんどん弱くなり続け、今もそれは続いている。
今どのくらい弱いかというと、
今年の3月に寮の追いコンのために弘前に集まったときは、
大幅に遅刻してコンパの終了間際に来て、
殆どすぐに2次会に行ったにもかかわらず、
気が付いたら、彼は寝ていた。
しかも俺の膝にすがって。
全然起きないので、あまりにうざかったため、
取り敢えず隣のヤツの膝に移し替えて、
その後なんとか起こして少し話したはずなのだが、
翌日聞いてみると、全く覚えていないという状態。
あのときは、本当に呆れ果てた。
『酒に飲まれすぎ』
これは問題である。
あまりの飲まれすぎ具合に、コンパで女を口説く余裕がない。
どころか、ろくにしゃべる時間もない。
こういう感じなので、私が「水口耕介に春は来るのか?」で述べた、
「話し上手になれ」
というアドバイスは、意味がない。
話し上手になったところで話す時間がないのだ。
どうしようもない。
ところで話す相手はどうなのだろうか。
話を聞くところによると、彼は大阪で結構派手に飲んでいるらしい。
出入り禁止の店がいくつかあるとか。まあ、そういう派手さはどうかと思うが。
更に聞くところによると、
もしかすると彼は職場で宴会部長的な存在であるかも知れない。
彼がどういうメンツでどんな飲みを展開しているかは知らないが、
そこにチャンスが潜んでいる可能性は非常に大きい。
ちらっと、
『こいつもしかして、いつも女の膝にすがってんのか?』
と思ったが、その画が想像できない。たぶん無いだろう。
しかしこれはいい方法であると思った。
「水口よ、女の膝にすがれ!」
気に入られるか、嫌われるかのどちらかだ。
そのふけ顔では、母性本能をくすぐるような、
そういうキャラを演じるにはちょっと難しいが、
意外とうまくいくかも知れん。
ひとこと注意をしておくなら、
「職場で避けられると問題なので、仕事仲間にはやめとけ」
ということだ。人生狂うぞ。