彼の大言壮語はさっぱり実現に結びつかない。
「今回の旅行はやりますよ」 (1998年初夏)
彼は今年の自転車旅行の前に私に熱く語ったものだ。
「ひとつの街にひとりの女」
これこそが彼の今回の旅の真の目的であったと、私は知っている。
しかし夏休みも終わりにさしかかった頃、帰ってきた彼は言う。
「いや〜、やろうと思ったんですけどね〜」
言い訳なら聞きたくない。
男なら言い訳をしてはいかん。
彼はどうしていつもこうなのだろう。
今回の旅行で残ったものといえば、
おじいちゃん
(写真館参照)との思い出だけではないか。
※(別にそれだけではない)
まったく、なってない。
しかもさらに話を聞けば、
旅行に行く前に東京の親父さんのところに行き、
友達と合コンに参加したはいいが、青森のヤツだとばらされ、
その上『ねぷた祭り』を熱く語った結果、
女の子に、
「ふ〜ん」
と軽く流されたらしい。
なんたることだ。
東京の女の子に青森から来たヤツがいきなり地元の祭りの話をして、
盛り上がったり、興味を持たれたりすると思っているのだろうか。
いや確かに東京の大学生などは田舎者の集まりではあるから、
田舎から出てきましたということでは大差ない。
しかし世の中全体で見ても『ねぷた祭り』に興味を示す娘は少ないだろうし、
東京にかぶれた女子大生にそれを期待するのは無理というものだ。
そこでビンゴがでるというのならば、
それは映画やドラマの中のできごとに違いない。
それが現実、しかもお前の身に起こったのなら、それは奇蹟だ。
起こり得ないことを、人は奇蹟と呼ぶ。つまり、そういうことだ。
それに、今は弘前に住んでいるとはいえ、
元々札幌出身じゃないか。高校までは札幌にいたじゃないか。
なぜ青森に染まってしまっているのだ?
確かにお前には青森が似合っているが・・・
彼は変わらなくてはいけない。
問題はコミュニケーションだ。
話すこと、即ち、話術と話題だ。
話すテクニックに多少問題があり、話す内容に大きな問題がある。
彼にはもっと多くのネタを身につけ、
それを状況によってフレキシブルに使い分けて、
たちまちに女の子を魅了できるような巧みな話術を身につけてもらいたい。
他にも数多く問題はあるが、それらは目をつぶろう。
・・・いや、私がつぶってもしょうがない。
取り敢えず、巧みな話術と魅力的な話題でごまかすことにしよう。
とにかく話術と話題だ。そうすればきっと春は見えてくる。
「冬来たりなば、春遠からじ」
である。しかし彼の場合はいつから冬なのだろうか?