水口ファン意思表示カードの歴史
第一章 製作されたわけ

第一部 きっかけとなったモノ

臓器提供意思表示カード(ドナーカード)が世間に知られるようになったのは数年前のことだ。
『あなたの意思を携帯してください』というキャッチフレーズのもと、
ACこと公共広告機構さんが一所懸命に宣伝していたのが記憶に残っている。
私はこれを見てひらめいた。(☆_-)キラリと。

『我々は意思表示をきちんと行わなくてはならないのだ。たとえそれがどんなことに対してでも』

このように思い立った私は、後に水口ファン意思表示カード(通称:水口カード)と呼ばれるものの製作を決定したのである。


第二部 当時の状況

そのころ私が寮務委員としての活動を終えていたか終えていなかったかよく覚えていないが、
大学の方も、物理科ゆえに、そして私がこれまでそれなりに単位を修得していたゆえにさほど忙しくもなく、
のんびりした日常を送っていた。あのころは幸せだった。・・・まあ、それはいい。
そのころの私は大学卒業後のことについてなど全く頭になく、
さらには4年生の講座配属についても2年生の終わりに「なるようになる」と結論づけてしまい、
それ以降は、実質的な行動はもちろん頭の中でさえノータッチを決め込んでいた。
その時期とこれから話すことを行っていた時期が本当に重なっていたかはあまり自信がないが、
わたしは2年生の後期あたりから、くだらない日常でもてあます暇をなんとかしたいと考えていた。
それと前後して私は当時2階階紙「通信ボーイ」の編集長だった(と思う)U京君と会談を行い、
「わくわく水口ランド」というコーナーをつくり階紙に掲載することを内密に決定していた。


第三部 わくわく水口ランドとのかかわり

「わくわく水口ランド」とは、

・「水口はヨット部が忙しくてあまり寮に居ないから朋寮(おとなりさんの女子寮)での知名度をあげて差し上げよう」
・「階紙担当も大変そうだから記事でも書いて貢献しよう」
・「俺の暇つぶし」

という三大要素が重なったことで生まれた20世紀最後の歴史的産物である。
わくわく水口ランドは、私が日常として見かける水口の普段の奇怪な言動を、
思い出したものからてきとーに脚色して記事にするという至ってシンプルなものであった。
わくわく水口ランドのネタを集めようと活動していく中で、
私が水口の変な写真が納められているアルバムの存在を知り、
また私が某Compシティーで3,980円(税抜き)のPhotoスキャナーを買ったということもあって、
水口カード製作の環境は整えられていった。
そして臓器提供意思表示カードのことがあって、プロジェクトが発動したのである。
そしてこのときは、カードを作るといってもカードとして配るのではなく、
階紙の紙面に載せて「勝手に切り取ってカードにしてね」としようと考えていたのだった。



第二章 製作開始から完成まで

第一部 落とし穴

作成が始まった。まずドナーカードのイメージをスキャナーで取り込む。
そしてコラージュ(?)したり、文字を入れたり、という作業を行って、カードは着々と完成に近づいていった。
しかし階紙に載せることを前提としていたことで問題が発生する。
階紙は寮の印刷機で印刷し発行していた。もちろんモノクロ印刷となる。
さすがに白黒じゃあかっこわりーということ、さらには、
裏の意思表示の文章と表の絵とを完全に重ね合わせて印刷することは
印刷機の都合やら、私の根性やらのことを考えれば、ほぼ不可能ということが判明した。


第二部 じゃあ階紙に載せなきゃいーじゃん

まあそれなら自分で発行するかと、カードとして自分で発行することを即決した。
幸いなことにそのころは自前のプリンタは支障なく動作しており、製作にはなんの問題もなかった。
カラーでと決めると、配色や文字の配置などがいろいろ頭に浮かんできて、
あーでもないこーでもないと何度も変えることになってしまった。


第三部 完成

いろいろいじくりまわして、結局プロジェクト発動からおそらく3時間程度でそれは完成した。
後に「水口カード1号」と私が勝手に読んでいたそれは、
表はドナーカードの天使(?)の首をすげ替えただけで、後はてきとーに、
「あなたの意思表示ありがとうございます」「むやみに携帯するのはやめてください」
などと字を印刷していたのみである。
「むやみに携帯しないでください」と書いたのは、
もしこれを携帯していて事故にでもあってしまったとき、
病院とかでこれが発見されてしまい、
「なんだこいつ、助ける必要ねーよ」
などという状況になったときに、
私の責任と自己嫌悪を回避するためであった。

・「水口カード1号」のイメージ



・裏に書いた内容の詳細

以下の各項目について必ず記載してください。
1.私は、水口耕介について以下のように認識しています。
ファンである ・特にファンではない ・嫌いである
許せない ・知らない ・その他(       )
署名年月日:             年     月     日
本人署名(自筆):                                 
水口署名(自筆):                                 
(可能であれば、この意思表示カードを持っていることを水口耕介が確認したことの証明として、彼に署名させてください。)

項目がひとつしかないのに1と書いてしまっているところが、
このころの私のかわいそうなところである。恥ずかしい限りだ。
ちなみに私はこのカードに「その他(おもちゃ)」と書いて水口に署名させた。
現在はどこかに失くしてしまっている。



第三章 発行と結果と

第一部 発行方法

このカードは私の部屋(当時は221号室)のドアに「ご自由にお取りください」と書いて置いておいた。
カードは作るのが面倒だったのでA4一回のみの印刷で10枚限定の生産となった。
配布開始は22時くらいだったと思う。次の昼くらいに見たらなくなっていた。
私の知る範囲で北鷹寮2階には、
私2(個人用と保存用)、みっちーさま、K三さん、U京、水口それぞれ一枚ずつの、計6枚が流れたとされている。
ちなみにしばらくたってからも水口は財布に自分のカードを携帯していた。
さて残りの4枚はどこへ行ってしまったのか?
私は一応制作者として気になってはいたが、いろいろ調べてまで知ろうと思わなかった。
まあ、2階生の誰かが持ってるんだろうと高を括っていた。
しかし私を待ち受けていたのは意外な展開だった。


第二部 意外な流通とその結果

当時私が住んでいた221号室の周りの見取り図はこうなる。

中庭201 みっちーさま&Kさん202 安孫子さん203 立石さん204 M雄さん205 直樹+偽モード系EV
廊下
222 水口+京都221 私220 栄行+自称ダメ人間219 マイティ+肉体バカ218 一郎さん階段

見ての通り当時201号室にお住まいなのは、東京都日野市出身の私の尊敬するみっちーさまだった。
そしてみっちーさまには交際相手の女の人がいらっしゃって、
その人はKさんという愛媛県出身のNBA級の朋寮生だった。
Kさんは私の知る限りこの図の範囲にかなり頻繁に出没していた。
そして201号室に行くには私の部屋の前を通過するというわけだ(おそらく中庭からは来ていなかったと思う)。
それが水口にとってのうれしはずかし朋寮メジャーデビューへと繋がった。
というわけではないが、私の部屋のドアにあるそれをめざとく見つけたKさんは、
それを朋寮に持ち帰ってしまったらしい。

ところで水口は当時寮連新歓実委をやっていた。
寮連新歓実委会といえば3寮で和気藹々、ちんちんかもかもに連日連夜宴が行われる。
そしてある日のこと、水口は寮連新歓実委の女の子のひとりから告白を受ける。

告白といっても愛の告白ではない。彼女が水口カードを持っているという告白だ。
その女の子は朋寮の4階生(だったと思う)。Kさんも4階生だった。流通のルートは明らかであろう。
私の配布したカードが、ブローカーのKさんに渡り、Kさんが寮連新歓の女の子に渡したはずである。
こうして彼が寮連新歓実委内で人気者になったかどうかは、定かではない。


第三部 迷宮入り

私の知る限りこの事件はこれ以上の展開を見せない。
Kさんが一枚所有していたとしても、明らかになったのは失われた4枚の内の2枚である。
それでは残りの2枚はどこへ行ってしまったのか?
それは未だ明らかになっていない・・・



第四章 2号

第一部 製作

そんなことがあってからしばらくたったある日、私はフイに思いついて水口カード2をつくった。
「2nd Style」と銘打たれたそれは、表はすげ替える首が変わっただけという向上心のかけらも感じられないできあがりとなった。
しかし裏は違う。裏のフォーマットは大きく変わった。
と声を大にして言えるほど変わってはいない。
内容は以下のようなものである。

・「水口カード2号」のイメージ



・裏に書いた内容の詳細


以下の2つの項目について、必ず記載してください。
1.私は、水口耕介について以下のように認識しています。
  (                                     )
2.私は、水口耕介の生き方について、以下のような提案があります。
  (                                     )
署名年月日:             年     月     日
本人署名(自筆):                                 
水口署名(自筆):                                 
(可能であれば、この意思表示カードを持っていることを水口耕介が確認したことの証明として、彼に署名させてください。)

ユーザー個人の自主性と幅広い意見を言いたいというニーズに応えた逸品となった。


第二部 製作したけど・・・

しかしこれを手にしたものはいない。なぜならこれは発行されていないからだ。
政治的な圧力により水口カードの開発・発行は突然中止となり、予算が下りなくなった。

ここで水口カードの歴史は終わる。
しかし配布された10枚は永遠に不滅である。

  注:燃やしたり・捨てたりしたら簡単に滅びます。しかも俺もすでに無くしてる。



※ 初出:2001.03.09「Mizuguchi Land Digital」;その後少々改変;最終更新 2003.04.28


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